28日、水曜。

イメージ 1 ヨセミテ三日目。

今日こそは、と朝一番からてきぱきと出発の準備。

泊まっていたホテルが「宿泊費に込み」のわりに豪華な朝食を準備してくれていて、朝から張り切って食べてしまう。満腹。

ついでに、昨日の夜もそうだったのだが、従業員の人びとの接客態度がとてもよくて、最初から最後まで気持ちよく過ごすことができた。お風呂・トイレなしの古い部屋だったけれど、他がよかったので全体としてはいいホテルだったように思う。

午前。三度目の正直を目指してMariposa Groveへ。「またルートが閉鎖されていたらどうしよう」、とちょっぴり不安だったのだが、今日は問題なく駐車場に入れた。

そこからトラムに乗って、一時間ほどの音声ガイドつきツアーに参加。解説によると、セコイアの樹齢は古いもので1500~2500年、ということなので、一番古い樹だとプラトンの時代からこの場所に立ち続けていることになる。氷河と岩の世界に比べればまだタイムフレームが人間に近いわけだけれど、それでも、仮に西暦1000年ごろ(平安時代)の日本人がこの樹をみたとして、その時点でこの樹はすでに樹齢1500年くらいの巨木に成長していたことになるわけだ。1500年の時間差というと、今からみて日本では古墳時代から飛鳥時代に移るあたりだろうか。現代の日本人が飛鳥時代のものをみる感覚で、平安時代の人びとがこの樹を眺めた計算になる。

そんなことを考えていると、「長いこと生きてきたんだねえ、きみ」と樹に向かって話しかけてみたい気分になってくるから不思議なもの。別に、自分がアニミスティックな世界観への傾きをもった人間だとは思わないけれど、それでも、こういう大きな樹をみていると、これは「ただの物質のかたまり」としてよりは「たましい」なりなんなりをもった生き物としてみるほうが自然なことなんじゃないだろうか、という気にさせられてくる。

ガイドによると、マリポサの森を開いたGalen Clarkはエマーソンの友人で、クラークの招きに応じてエマーソンもこの森にやってきたことがある、という話だったのだが、エマーソンなんかはこの森をみてどんな感想をもったんだろうか。書いたものも残っていそうだし、読んでみたいところだな。

午後。再度ヨセミテ・バレーへ。最後にちょっとハイキングでもして帰ろう、という予定だったのだが、バレー内に到着したあたりから雨が降り出す。昼食ついでに雨宿りして、合い席したボランティアのおばちゃんの長話に相槌をうちつつ晴れ間をまつ。

一時間くらいまったんだろうか、再び日の光が指し始めた頃あいをみてMirror Lakeへ。

小学生時代にレンタサイクルでこの湖にでかけたことが記憶に残っていて、しかもこの湖関係ですごく印象深いエピソードがあった気がするのだが、それがなんだったかが思い出せないままトレイルを歩く。

ゆっくり寄り道などもしながらよく整備された散歩道を一時間ほど。もうすぐ目的地、というあたりでまた雨が降り出す。雨はいやだなあ、傘でも持ってくるべきだったなあ、と思いながら歩いているうちにミラーレイクまで到着。湖をみた瞬間、小さいときにここまでやってきたときの記憶がよみがえった。

「え、せっかく頑張ってきたのにこれだけ?」

というのがそのときの感想だったんだった・・・。

トイレの前で雨宿りしつつ、五月下旬なのに雨からあられに変わったお天気を眺めていると、「もっと早く思い出せてさえいればなあ」と自分でじぶんがうらめしい気持ちになってくる。

20分ほど、雨脚が弱まるのをまって、「バークレーのサンパブロ通りからやってきた」という親子を道連れに、『雨に唄えば♪』だよ」、と世間話をしながらシャトルバス乗り場まで。

駐車場でびしょぬれの服を着替えて、「名残りおしいなあ、またこれるかなあ」と後ろ髪を引かれながら午後6時まえにヨセミテを出発。

行きと同じ道を通ったのだけれど、高いところから低いところに向かうせいか、帰り道のほうが見晴らしがだんぜんよい。強烈な西日が正面からもろにさしこむ時間帯だったので、運転するにはかなりまぶしかったのだが、景色がよかったおかげでご機嫌なまま走り通すことができた。

休憩をはさみつつ、順調に距離をかせいで夜10時まえにはバークレーに到着。久しぶりのわが家でうどんを食べてから就寝。

よい休日になりました。感謝。