11日、金曜。

Collective Intentionality最終日。

午前。Tony Lawsonという人のKey Note Session。ケンブリッジからやってきた「経済学の哲学」の大家というふれこみなのだが、典型的なイギリス英語を極端な早口でまくしたてられてついていけず。

「サールの立場と自分の立場の類似性と相違を浮かび上がらせることを目指す」ということではあったのだが、サールの著作から何箇所かを引用しては一つひとつに細かい批判を加える、というスタイルだったので、最初から全体としてクリアなメッセージが出るような構成にはなっていなかったのかもしれない。

お昼。Cognitive Ethologyが専門だ、というフランスからきた人の話。大略、馬でも象でも、日ごろからそれこそ24時間一緒に行動していれば、彼ら/彼女らが「心」をもったり「考え」たりしているとしか結論できなくなる、というストーリーなのだが、そのつど紹介してくれる実例がなんというか感動的。

たしかに、どうせ「動物の心」とか「動物の思考」を話題にするのなら、霊長類だけを相手にしててもつまらんよな、という気もするな。

午後。とくに聞きたいものもなかったし、何件か物理的な用事を片付けたり書店めぐりをしたり。

夕方。Bancroft Hotelのフロアをぶちぬきで会議全体のBanquet。盛況。100人は超えていたんじゃないだろうか。

着座しての本番が始まるまで、Rと内輪の暴露話をしたり、Bの息子の誕生裏話を聞かせてもらったり。

夜。オハイオから来たRさんと同じテーブルになったのだが、以前にシカゴで教えていたことのある人で、日本から来ていた某さんのことも知ってますよ、ということ。

いろいろと聞かせてもらう。ほえほえ。

ついでに、いまの勤め先にも日本から来たPhDの生徒がいた、ということで、これはたぶんとなりの教室にいたなんとかさんのことじゃないかと思うんだが、よく知らない人だしで中途半端なまま話が終わってしまう。

夜。だいぶん出来上がってから、今日の午前に動物行動学の話を聞いたM. K.-W.さんのところへ。

彼女の「指」をみて、なんというか酔いが醒める。

毎日えさをあげているうちにこうなった、という太い指(普通の人の1.5倍はあったんじゃないだろうか)にはしわの類がまったくなくなっていて、しかも右手の人差し指の第一関節から先がすっかりなくなってしまっている。

「動物と一緒に暮らしていれば自然とこうなりますよ」と平然と語ってくれたのだが、こういう人でないと「動物の心」とかなんとかいってもうそっぽくなるだけなんだろうな。

四日ほどいろいろな分野の人の講演を聞いてきて、「越境」という言葉にちょっと魅力を感じたりもしていたのだけれど、中途半端に手を出してもみっともない姿をさらすだけだろう、とさいごの最後で振り出しに戻った感じ。