朝。新しい歯ブラシを使ってみる。
日本でも売っているメーカーのものなのだが、とにかくサイズが大きい。使っていると、文字通り「ごしごし」と口のなかを磨かれている感じ。
歯ブラシが「ブラシ」と呼ばれるわけがよくわかった。
夜。computer architectのREさんに会う。シリコン・バレーのソフトウェア会社で"Sims"というAIのゲームを作っていて(ゲームには詳しくないのでよくわからないのだが、世界で一番売れているくらいのゲームソフトらしい)、そのかたわら哲学にも「趣味」以上のレベルで打ち込んでいる、という人。
「Simsのほうでは、後期ウィトゲンシュタインをプログラムの根本的発想として採用してみたのだが、今回はブランダムが"Making it Explicit"で展開したプラグマティクスの枠組みを使って、「哲学AI」を開発中なので、そのパイロット版を試してみてくれないだろうか」、ということで会うことになった。
IT業界とはあまり縁のない人生だったので、「どんな人かな? 話が合わなかったときに間がもつだろうか?」とちょっぴり不安に思ったりしていたのだが、登場したのは「頭がつねに高速で回転していて、放っておいても勝手にしゃべり続ける」タイプの哲学の世界にもよくいそうな人。
アメリカ人だとばかり思っていたら、生粋のオックスフォード人で就職がシリコンバレーだったからしょうがなくアメリカにやってきた、ということ。
毎日車で一時間以上かけて通勤している、ということだったので、「なんでまたバークレーに?」と聞くと「スタンフォードとかサンノゼはこぎれいすぎて自分にはあわないから」という返事。ごもっとも。
「哲学AI」じたいはどうだったのかな?
まだ開発段階で、すこし使いづらいところもあったりしたのだけれど、基本的には画面に登場する仮想の哲学者たち(モデルになっているのは古典的な経験主義者、カントからブランダム、マクダウエル、ホージランド、AI関係ではサイモンとかまで)を相手に、「知覚」とか「神の実在」とかをめぐって会話を進めると、「スコアキーパー」がそれぞれの発言を追いかけて発話者の哲学的特性を確定していく、というもの。
Simsみたいな社交AIゲームの哲学版を作ってみたらこうなった、という感じなんだろうと思う。
うまくいくかどうかは、会話のうえでの選択肢の数をどこまで増やせるかにかかっているんじゃないか、という感じ。